私たちが食べているのは成長した大人の昆布の葉(葉状部)で、これは胞子を作って子孫を残すという役割をもつことから胞子体(sporophyte)と呼ばれます。昆布の一生をたどる出発点として、先ずこの胞子体がどのようなものか見てみましょう。
図1には成長した昆布の胞子体の姿を示しています。全長は2〜8メートル、幅は30cmほどで辺縁部は波打っています。一番下には根のような器官がありますが、これは岩などの基質に結合するための器官であり付着器と呼ばれます。この付着器は陸上植物の「根」とは異なり、栄養分や水分を吸収する働きはほとんどありません。付着器の直ぐ上の細くなった部分を茎状部と呼び、茎状部の上の広がった部分を葉状部と呼びます。私たちが食べているのは主にこの葉状部です。葉状部は、光合成により糖分を作ると同時に海水中の窒素やリン酸などの栄養分を吸収する「根」のような働きも担っています。
一般に、植物の成長は成長点と呼ばれる細胞分裂の特に盛んな場所を中心に起こることが知られていますが、陸上植物の場合、この成長点は「芽」などの先端部にあり先端部が成長することにより植物体の伸長が起こります。一方、昆布の成長点は陸上植物とは異なり葉状体の下方(茎状部の上方)にあるため、先端の葉状部を上方に送り出すようにして伸長が起こります(図1・2)。従って、昆布では根元に近い部分が若く先端部分が古いことになります(陸上植物とは反対です)。
さて、昆布胞子体は秋口に成熟して子孫を残すために胞子を作ります。胞子を作る組織は主に葉状体下部の表面にあって班状に見えることから「子嚢班(sorus)」と呼ばれます。子嚢班には胞子を作る細胞が集まっており、その細胞数は1平方センチメートルあたり30-40万にもなります(図3)。この細胞では1細胞あたり30個ほどの胞子が作られますので、子嚢班全体では1平方センチメートルあたり約1000万という膨大な数の胞子が作られます。子嚢班から海水中に放出された胞子は長さの違う2本の鞭毛をもち、海中を遊泳できるため「遊走子(Zoospore)」とも呼ばれます(図3)。
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